市川渚さん

PEOPLE & WALLS 04

機能美が居心地のよさを決める。
市川渚がモノや素材選びに
妥協したくない理由

市川渚

クリエイティブ・コンサルタント

心地よい空間を彩る大切な存在である壁と、そこで過ごす人との関係について、クリエイティブな活動に携わる人々との対話を通じて考えていくLIXIL「PEOPLE & WALLS MAGAZINE」。
ファッションやデジタルテクノロジーの分野でクリエイティブコンサルタントとして活動する市川渚さんは、機能性と美しい佇まいが両立しているものに心を打たれると言います。それらを兼ね備えたアイテムを生活に取り入れ、快適に過ごす工夫をしている彼女。今回は、空間へのこだわりや機能美のこと、そして、人が自然体でいられるテクノロジーのあり方についてお聞きしました。

取材・文:松井友里 撮影:寺内暁 編集:服部桃子(CINRA)

市川渚 (いちかわ なぎさ)
ファッションデザインを学んだあと、海外ラグジュアリーブランドのPRなどを経て、2013年に独立。フリーランスのクリエイティブ・コンサルタントとして、ファッション、ラグジュアリー関連の企業やプロジェクトのコンサルティング、デジタルコンテンツのクリエイティブ・ディレクション、プロデュース、制作などを手がける。

機能美が備わったガジェットで、部屋の質を上げる

InstagramやYouTube、自身の連載などから、徹底した美意識がうかがえる市川さん。もともとストレスを感じやすいタイプであることから、生活面ではさまざまな工夫を凝らしてきました。その結果、身の回りを「心から好き」と思えるものだけで固めることが大切だと気づいたのだそう。新型コロナウイルスの影響により、家で過ごす時間が増えたことで、細部にまでより一層意識が行き届くようになったと言います。

市川:以前は外出している時間が長かったので、家の空間づくりは、妥協とまではいかないけれど、そこまで入れ込んでいなくて。いまはほとんど家にいるので、小さなことが気になって、いろいろと買い揃えました。もっと広い場所に住みたいとか、環境的な理想はありますけど、使うたびに「いいなあ」と思えるものに囲まれている我が家に、居心地のよさを感じています。

市川渚さん
市川渚さん
「心地よさ」に対する市川さんのこだわりは並々ならぬもの。デジタルテクノロジーに詳しい彼女らしく、自宅はスマートホーム化を進め、さまざまなガジェットを取り入れています。

市川:スマートスピーカーは何台もありますし、夫が湿度や気圧、二酸化炭素濃度のデータをとれる小さなコンピュータを組み立てて設置したので、頭痛がしたときはそれをチェックして「何分前から気圧が下がってる」と確認したりしています。あと、寝室に掃除機を置いているんですけど、夜、暗闇で光る充電ランプが気になってしまって。初めはコンセントを抜き差ししていましたが、いちいちやるのは少し面倒なので、スマートプラグを導入して、夜眠る時間になったら充電を切って、朝つくように設定しました。

気になる点をそのままにせず、よりよい状態を追求していく市川さん。その姿勢はモノ選びにも及びます。

市川:美しいだけで不便なもの、便利だけど美しくないもの、そのどちらに対しても違和感を覚えます。「デザイン」とは、ビジュアルだけじゃなくて、使い勝手のよさも関係してくるもの。それを両立させ、突き詰めたものを見ると感銘を受けますね。

「生き物みたい」。呼吸する壁が空間にもたらしてくれることは?

市川さんの機能美に対する考えとエコカラットの理念に、共通する部分はあるのでしょうか。取材当日、エコカラットに触れ、自然素材を使った質感や、においや湿気を吸着する機能を知った市川さんは、「生き物みたい」と感想を漏らしました。

市川:エコカラットの壁は、こちらが不快に感じるかもしれない湿気やにおいを吸って、気にならない程度に調整してくれる。「吸って出す」という行為は呼吸と同じだから、「生きている壁」という感じがします。それでいて見た目はシンプルというのがいい。生活する空間には、素材も質感も安心できるものを置きたいので、エコカラットはすごく馴染みやすいと思います。

エコカラットのサンプルに触れる市川さん
水分を吸ったエコカラットの上に紙を置いた様子。壁材より水分が吐き出され、表面に置かれた紙が湿気を吸い丸まっていく
主張しないのに、しっかり機能性を感じられる。自分で貼れる場所や柄を選ぶことができる。そんなエコカラットの「強要しないこと」「選択できること」は、市川さん自身がテクノロジーやガジェットに望んでいることと同じだと言います。

市川:私がガジェットに望むのは、「この機能を使って!」と無理なアテンションをしてこないこと、そして取り入れることで生活が改善されることです。これはデジタルウェルビーイング(テクノロジーと生活のバランスを、改善に向けて取り組むこと)という考え方のなかでよく言われています。

エコカラットは、生活空間にテクノロジーが主張しないかたちで溶け込んで、私たちの生活を自然と豊かで快適なものにしてくれるという点で、自分が求めるものにすごく近い存在だなと思いました。最近読んだ『カーム・テクノロジー(穏やかな技術)』という本には、本当に人間のことを考えてデザインすれば、生活に自然と溶け込みながら人にシグナルを送るはずだし、そうしたデザイン手法がテクノロジーにも必要である、ということが書いてありました。エコカラット のコミュニケーションは、まさに理想のかたちですよね。

ノートパソコンを操作する市川さん
エコカラットシミュレーターを触る市川さん。「白が好きなのですが部屋に関しては真っ白だと味気ない感じがして。自宅の空間には金属や木の質感を適度に入れるようにしていりので、自分の家に取り入れるなら、石っぽい質感の壁にして、クールな印象に仕上げたいですね」
テクノロジーの発達は、ときとして人間との対立を仄めかされることもあります。しかし、「敵対しても仕方がないし、仲良くしながら生きていけたらいい」と、市川さんが描く未来は明るいものでした。

市川:機械に任せられることは任せて、人間は、人が介在しないとできないことになるべく時間を費やすべきだと思っています。プライバシーに関することなど、気をつけなければいけない部分はもちろんありますが、新しいものがいろいろと生まれているからこそ、テクノロジーに対してなるべくポジティブにとらえたほうがいい。

私は基本的に面倒くさがりな性格なので、なるべくその力を借りて、物事を自動化し、効率的に生きたいんです。それは仕事だけじゃなく、家づくりも同じで。自分と家族をよりよい状態にしてくれる、機能美を感じるものに囲まれて今後も暮らしていきたい。たとえば今日なんかは、湿気でジトジトしているので、エコカラットを取り入れた空間ならきっと快適に過ごせるんでしょうね。家を購入した際は、ぜひ導入してみたいです。